【エネルギー業界】ウクライナ侵攻に伴う影響とは
皆様、こんにちは。今回は前回と前々回に引き続きウクライナ問題です。
前々回はウクライナの概要について、前回は自動車業界がどんな影響を受けるのかを見てきました。今回は原油や天然ガスといったエネルギー分野に焦点を当てて見ていこうと思います。この記事は3/2 09:30時点の日経新聞の情報を参考にしています。
前回の自動車業界関連の記事はこちらから⬇
前々回のウクライナ侵攻の背景に関する記事はこちらから⬇
原油
原油はロシアから多く取れ、1日あたりの原油の生産量で見ると、アメリカ、サウジアラビアについで世界3位です。1日に1154万バレルの生産がされます。
ロシアの代表的な油種である「ウラル」は世界から敬遠され、需要が落ちています。2月下旬と比べ3%以上下落し、国際指標である「北海ブレント」と比較すると1バレルあたり11ドルも差が開いてしまっています。この差は過去最大であると言えます。
敬遠しているだけでなく、ロシアがそもそも供給をストップするので、世界の1割の供給量を占めるロシアの原油がなくなると、余計に国際指標の北海ブレントは上昇していきます。原油が上昇すれば、石油や石油由来製品も上昇し、戦争が長引けば家計に負担がかかります。
石油事業
日本が参加している石油事業も商社を中心にあります。「サハリン1」と呼ばれるアメリカのエクソンモービルが中心となり原油の生産を行っている事業で、主にアジアへ輸出をしています。日本勢もサハリン石油ガス開発という名前で、伊藤忠商事、石油資源開発、丸紅、INPEXなどが出資しています。ロシアは国営石油会社のロスネフチが参加しています。
今日の速報で、エクソンモービルはこのサハリン1の事業から撤退すると表明しました。日本でもロシアへの批判が高まれば撤退を余儀なくされると思います。
天然ガス
サハリン1に並ぶ「サハリン2」という事業もあります。サハリン2はイギリスのシェルという石油大手が中心となり、LNGの生産をして主に日本に輸出をしていました。将来的には原油の生産も行う予定でしたが、昨今のロシアのウクライナ侵攻に批判をしてイギリスのシェルが、撤退をしました。
ここにはロシアの国営ガス大手ガスプロムがいたからであり、合弁を解消し、侵攻に関して
とロシアを非難しています。更にシェルはシベリアのサリム油田と、北極圏のギダン半島での開発事業から引き揚げるとのことで、
と強調しました。最大10%出資すると約束していたノルドストリーム2への関与もシェルはやめるという徹底ぶりです。
ちなみに、サハリン2でのLNG生産能力は日本の輸入量の1割強に相当する1000万トンに上り、そのうち500万トンほどをJERAや東京電力が長期契約しています。
仏トタルエナジーズ
フランスのトタルという石油会社は、ロシアのノバテク、中国の石油天然気集団と共同でLNGプロジェクト「ヤマル」を立ち上げています。2017年から稼働を続けており、主に欧州やアジアに輸出をしています。そんなトタルはロシアでの新規投資はしないと昨日3月1日に表明しました。新規投資しない予定で、ヤマルを解消するとの報道はまだなされていませんが、今日中にもトタルのCEOは、フランスの経済財務大臣と会う予定があるので、国から撤退するよう圧力をかけられるかもしれません。
トタルがノバテクと関係を解消しないのは、19.4%出資しているほとんど関連会社なのです。また、トタルとノバテクはアークティック2という事業も共同で行っており、中国勢、三井物産、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が出資しています。
ただ、関連会社並に出資をしているからといって、関係を解消しない理由にはなりません。事実、イギリスのBPは先月2月28日にロシアのロスネフチの株を19.75%の保有分売却しました。ロスネフチはロシア政府が過半数出し、あとの20%弱をBPが持つという構造で、もちろんBPが第2位の株主でした。BPはロスネフチと合弁事業を解消し、事実上のロシアからの撤退をしたので、トタルも批判が高まればノバテクとの合弁事業を解消するかもしれませんね。
その他コモディティ価格のチャート
パラジウムとアルミニウムの高騰に関しては前回の記事で触れましたね。実際のチャートがこのような形になっていました。
金がなぜ値段が上がっているかと言うと、供給不安というわけではありません。金が安全資産だからです。ウクライナ情勢の不安感や、対ロシア制裁が強化されたことで金に資金が流入し値段が上がりました。ロシアの銀行やロシアにある資産が凍結され、暗号資産(仮想通貨)に資金をいれるのが怖かったりする人が、金に流入させたりしています。足元では1トロイオンス1930ドルを超え、1グラム7847円近辺を推移しています。
ウクライナは「欧州の穀倉」とも呼ばれるので、小麦が上がるのは必至でしたね。侵攻の2/24は急激に上昇しています。
まとめ
今回はロシアとウクライナ情勢から原油や天然ガスについて見てきました。ロシアの原油を世界は敬遠し、合弁会社を解消するのはロシアの主力産業を壊滅化させ、「ジリ貧」に追い込めるかもしれませんが、逆世界もロシア産の原油や天然ガスが調達できず、国際価格が上がってしまっています。
それを逆手に取ってプーチン氏は世界に対して強気に出ており、軍事侵攻や、停戦交渉で合意をしないとの姿勢を見せ、ロシアの領土をかつてのように広げようとしています。
各企業はロシア抜きの世界でも供給網が安定するようなサプライチェーンを構築し直す必要があります。今回のロシア・ウクライナショックに限らず、日本は中国が台湾へ侵攻した時という有事があった時のためにも同じような想定をしておく必要がありますし、北朝鮮が軍事攻撃を仕掛けてきた時でも然りです。
日本に限って言えば、戦後80年弱という平和な世界が今崩れかけようとしています。しばしば戦争が起きる時は世界各国が自分の国のことしか考えなくなるようなときに起こります。プーチン氏もロシアの国土拡大や、権益獲得のことばかりに躍起にならず、人命の尊さや相手のことを思いやる心を取り戻してほしいと切に願います。
最後までご覧いただきありがとうございました、ではまた明日です。